プログラミング⼈材育成の在り⽅に関する調査研究の読み方

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総務省が平成26年度に実施した「プログラミング人材育成の在り方に関する調査研究」の結果を公表しています。今回はその読み方についての解説と私なりの評価です。

いきなり所感

最初の感想は長い・・・長過ぎる・・・予算に応じて文字数長くしすぎたんじゃないだろうかと勘ぐってしまいます。ドキュメント作成業者を入札で決めたとしたら、受注業者が金額の割に文字数が少いと後で監査に引っかかりやすいとか言ってね。素人が監査せざる得ないと、中身の重さより文字単価の方が評価し易いのでこうなってしまいますよね。高度な専門知識に対する調査資料の納品に対する公正な監査って、そもそもが無理ゲーなのでこうなると。。。話が逸れました。
先に書いときますが、忙しい人は概要版の5章と6章だけ読んで下さい。4章途中までのくだらない教育の実態とか企業ニーズのアンケートとかは読み飛ばしましょう。「教育実態はプアだけど、社会ニーズは超高い」これで十分です。

4.3 教育形式・コンテンツ

「4.3 教育形式・コンテンツ」のポイントは「Scrach」と言うプログラミング言語が今の世の中の一番多い教育ツールだという話です。
私はこれについては残念な話だと思っています。アンチとまでは言いませんが、Scratchが発表された2006年と今では状況が違います。IoTとかロボットが叫ばれる時代に、この10年以上前のレガシーなツールが最先端のトレンドって感じで言われると残念な気持ちでいっぱいになります。Scratchで良しとせず、もっと先進的な取り組みをしようとしている教育ツールはたくさん生まれています。最近のプログラミング教室とかで「イノベーションを支えるのはITです。さあ、プログラミング教育を初めましょう。我が教室では世界中で親しまれるScratchというプログラミング言語で教育を行っています。Scratchはあのマサチューセッツ工科大学が開発した教育用言語なんです。(キリッ)」ってだけ言っている人は、少なくともこの10年間でプログラミング教育のイノベーションが取り組まれてきた事にはこれっぽっちも頭がまわっていない可能性があります。ビジュアルプログラミング一辺倒の人とかもね。注意しましょう。
さて、次の5章と6章がこのドキュメントの一番重要な部分だと思います。「プログラミング教育とは何がゴールで、どのようにすすめていけば良いか?」の試案がここに集約されています。忙しい人はここだけ読んで下さい。

5章

5章のポイントはプログラミング的思考を鍛える事で「モノづくりの能力」や「課題解決力」が高まり、未来で生きる能力として重要だよって事です。国語や算数だけでは足りなくなってきてるんですね。いくら高学歴でもプログラミングがなかなか習得できない人は沢山います。彼らは国語と数学はとてもできるんですよ。でも何かが足りない。IT業界で新人を育成していると、うっすらその理由は見えてくるのですが、それをどう鍛えていけばよいかは色々と試行錯誤を積み重ねてきました。その経験こそが私のプログラミング教育に対する判断基準なのですが、そこについてはまた別の機会に。
それと多くの人が混同しているのですが、国語や算数をパソコンやタブレット上のソフトウェアをつかって、より理解しやすくする取り組みは「教育のICT活用」ということで、プログラミング教育とは似て非なるものです。
http://www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.jp/08ojt/ict/

6章

6章については、プログラミング教育を各段階でどのようにすすめていくかという試案になります。ここについては個人的に非常に異議があります。4章の解説でも少し触れましたが、ビジュアルプログラミング言語に頼りすぎです。ロボットやIoT等の未来の子供達に必用な教育は、テキスト(文字)言語によるプログラミング開発が主流にならざる得ません。その根拠を述べだすとキリがないのでここでは省きますが、現場の運用を考えると当面ここに劇的な変化は起こる気配がありません。従って、過度にビジュアルプログラミング言語に頼りすぎる事は、その後の教育の発展性への障害になると感じます。また、再度申し上げますが、Scratchはそれほど「ビジュアル」でもないんじゃないかとおもいます。結局それは十数年前の「ビジュアル」では?と感じるんですね。ビジュアルプログラミングを教える人達は、そこで思考を停止してはいけないと思います。イノベーションの種をまくための教育カリキュラムを作ろうとする人たちが、それ自身にイノベーションの起こる可能性を考えて無いっていうのは滑稽です。

のこりの章

7章と8章はまた斜めに読みましょう。7章とかは予算対応で作った3章あたりをロジック的に回収してるだけ感が漂うのは気のせいでしょうか。まあ、入札でドキュメント作成業者を決めると・・・しつこいですね。
9章は非常に重要な課題を提起していますが、その解決のための「普及取り組み案」がプアだという課題を抱えています。まあ、この普及取り組みが発達していれば、課題は存在していないはずなので当たり前といえば当たり前なのですが、それにしても調査範囲の浅い資料と感じざる得ません。

まとめ

結局のところ、プログラミング教育の必要性についてはある程度言及できていますが、どうやればよいか?ということについては貧弱な資料だと思います。まだまだ始まったばかりの分野だというわけですね。たしかな答えはだれもわかっていません。専門家っていうほどの専門家もいないわけです。もちろんこれまでもプログラミングを教える教育機関はあった訳ですが、おもに専門学校か大学だったので初等教育の専門家はむちゃむちゃ少ない。しかも、この世界の働くプログラマー・システムエンジニアの最終的な教育機関は実は開発現場や企業であって、教育現場のそれとは大きなギャップがあります。そこにプログラミング的思考についても沢山の教育ノウハウの種みたいなものがあるはずなんですが、有識者会議にはそういった人はあまり入っていないように見えます。もっと社会全体で骨太の議論ができるようにしたいですね。
今後も情報をウォッチしていきたいと思います。

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