2017年5月17〜19日に東京ビックサイトで開催された教育分野の上期最大イベント「第8回教育ITソリューションEXPO」を視察してきました。今年はスゴイ人。ビックサイトの西館は東館より規模が小さいことが多いのですが、これだけ集客があるなら、東館でも良かったのではないかと思いました。注目度の高さがうかがい知れます。もちろんプログラミング教育だけでなく教育のICT化全般(というかプログラミング教育はほんの一部)の日本最大規模の展示会ということで、非常に活気がある展示会でした。IT関連の展示会ではこの前週にJapan IT Weekという上期では最大級の総合展示会があったばかりで、主要企業にとっては連投になってしまう会社も多数あり、回避する会社も多いのかなと思っていましたが、これだけ集客があると出展せざるえませんね。「みらいの学びゾーン 学びNEXT」という特設ゾーンで開催されたプログラミング教育の分野も徐々にコンテンツが増加し、今回初出展のプレイヤーもちらほら。色々聞いたり触ったりして、会場のみで公開されていた学校用の指導テキストもバッチリチェックしてきました。個別の気になるコンテンツは別途しっかりと記事にしたいと思いますが、まずは簡単な各コンテンツの紹介と総合的な感想、それに今回の展示会で見えてきた今後の予想される流れについて書きたいと思います。
プログラミング教育として今回の出展コンテンツを俯瞰してみたときの、大きな分としてロボット系とアプリ系の2つの軸が一番わかり易い軸でしょうか。アプリの方は主にゲームを作りましょうとか、組み込まれたキャラクターや自分で描いたキャラクターを動かしましょうというのが主流でした。出展者としては「Tech for elementary(株式会社エクシード)」さんとかですね。かなり浸透してきている分野で、既にプログラミング教室を展開しているメインプレイヤーは出展していなかったため、それほど目新しさはありません。まあ、彼らが利用しているScratchを展示しても、コンテンツとして進化した感じはないので意味がないのかもしれません。出展していたコンテンツも、利用言語としてはビジュアルプログラミングが主体で代わり映えはしません。というかビジュアルプログラミングしかなくないですか・・・良いのか?
もう一方のロボット系は長い実績のあるアーテックさんが大きなブースを学研さんと一緒に出展されているのを中心に、中小の新しいコンテンツ業者さんが出展されていました。中でも勢いを感じたのはナチュラルスタイルさんとタミヤさんのコラボブース。タミヤさんは一般的なコンシューマには強く、ナチュラルスタイルさんとはIchigoJamで協力関係にあり、タミヤさんの中でワークショップとか開催されていた
ので、いつかはと思っていましたが、とうとう出てきたなという感じです。他にも昨年までは単体のMakeblock(Shenzhen Yuejiang Technology)さん(中国・深圳)が単独でも出展しつつ、ケニスさんのブースにも配置されていて、漸く国内の提携先を捕まえたのかなといった雰囲気でした。アジアマーケットで打倒LEGOを虎視眈々と狙っているのがわかります。MakeBlockさんは2年ほど前には総合展示会に出展を開始し、国内の販路をさがしていたので、やっとでパートナーが見つかってきたのかもしれません。他にもITOSさんと言うところが独自のロボットとプログラミングツールで出展していたりして、興味深かったですね。もう一つロボット界隈で特徴的だったのはLEGOが展示から外れてきていること。ロボットプログラミング教室模索中のZ会さんのブースでみたぐらいで、同様の教室を全国展開しているヒューマンアカデミーさんでは独自のロボットを使っているので、かなり落ち着いてきたなという印象です。LEGOの教育ライセンスは高額とのことなので、そのあたりが嫌われているのかもしれません。LEGOさんはプライスリスト変更しなきゃいけないんじゃないかな。
明確に区別して展示しているところは多くはありませんでしたが、コンテンツの出し方をみていると、意識しているところは多かったですね。アーテックさんとかはアーテック単体は学校用、学研とのコラボ製品は塾用と明確に区別して訴求してました。この学校用かそうでないかを急速に意識するようになったのは、おそらく学習指導要領のパブコメ用の素案がでた事と、それにともなって既存の教科の中でプログラミング教育が行われることになったということが浸透したからだと思います。これによって、学校教育への導入を諦めたコンテンツも出始めているのかなと思いました。もちろん小学校の学校教育のカリキュラムには「総合的な学習」という、ある意味なんでもできる時間があるので、究極的には学校教育に取り入れようと思えばなんでも取り入れられるのですが、いかんせん現場の負担を考えるとプログルさんのようにカリキュラムにマッチさせました!と言うもののほうが簡単に取り入れることができることが想定されます。この煽りをもろに受けているのがロボット系ではないでしょうか。アーテックさんとかは小学校の指導要領にあわせた指導案の資料を展示していたりして、挑戦している感じが十分にありましたが、他の企業は軸足を民間の塾にむけてプロモーションを始めているように思えました。
この傾向、今後更に強まるかもしれませんが、私は残念なことだと思います。このブログでは何度か言っていますが、プログラミング教育を既存のカリキュラムの中に取り入れるという方針は、完全に大人側の都合の話だとおもうのですね。じゃあ、仮に子供達に向かって、「ロボットをつかってプログラムを勉強しよう!」と「最小公倍数をプログラムで勉強しよう!」はどちらが興味をもって取り組む可能性が高いと思いますか?殆どの子供が前者なんじゃないでしょうか?世界は既に子供達の興味を最大限に増幅させるロボットやセンサーを使ったSTEM教育の一部としてプログラミング教育をとらえようとしている時代に、完全に大人の都合でロボットやIoTの要素を取り入れにくくしてしまった指導要領とそれを決めた日本の教育に未来はあるのでしょうか?
ほんとうに子供達の為により良い教育を提供できる会社が、適切な利益を得ながら、更に教育のイノベーションを進めていけるような社会を目指して、今後も業界の動向をウォッチしてかなければいけませんね。