2011年度未踏スーパークリエーターの鵜飼さんが書かれた「Hour of Code」に対する記事が秀逸なので紹介したいと思います。
「Hour of Code」は世界的に有名なプログラミング教材です。日本では利根川さんを代表とする「みんなのコード」さんが推進しています。
http://hourofcode.jp/
「功罪」という刺激的なタイトルですが、実際は「Hour of Code」の目的と限界を説明しています。
端的に言うと「Hour of Code」はプログラミングに触れる体験ツールであって、本格的な教育ツールでは無いと言っています。「Hour of Code」は体験の為に専門にデザインされたツールであると。なのでこれでプログラミング教育をやったことにするのは違いますよと。
これは「Hour of Code」に限らず、パズル型のビジュアルプログラミングツール全般に言えることなのですが、そのあたりを結構ぼかして伝えてる人が多いんですよね。「これでプログラミング教育オッケ-ですよ!」って言われると、これから義務教育として教えなきゃならない側は「これでいいんだぁ。結構簡単でよかったぁ。」って勘違いしてたりするんですけど、これで良い訳ないんですよ。体験は体験でしかないから。その先の学習が本丸ですよ。
ただ、ぼかして伝えちゃってる事例が多すぎるので、プログラミングへの理解が深い人が「あんなもの意味が無い!」って批判したりして、あまり小難しいことしたくない現場と軋轢が起きつつあります。批判してる人達もあれが教育ツールとして紹介されるから違和感感じるわけで、[
あくまで体験ツールであって、その先に教育コンテンツが必要なんです」って最初から言われたら、「そうですよね」って納得できる話なんですね。
別の記事で紹介した総務省の実証プロジェクトについても、このような「体験ツール」の採用が多すぎるのが気にかかります。体験型のツールっていうのはあくまで「体験」なので、メンター育成も実施も一番ハードルの低い方のプロジェクトなんですね。厳しい言い方するとこの程度は成功して当たり前であって欲しい。そうじゃないと2021年以降の中学校とかもっと頭が痛い訳で、そのようなプロジェクトを何度も行わなければならないほど、地方のメンター育成の壁は高いのか、はたまた何か別の力が働いているのか・・・いや、本当に学校現場は難しいことなのは、いろいろ解ってはいるのですが・・・
何れにせよプログラミング教育はまだまだ始まったばかりの分野なのです。この「体験ツール」だらけの現状で良いはずがありません。今まではすべてのツールが「プログラミング教材」として一つのくくりになっていますが、実際はどのステージの教材であるかの細分化が始まります。「体験ツール」なのかその先の教材なのか・・・教育コンテンツの開発者や情報を発信する側も、そのあたりを明確にして情報提供をしなければいけませんね。
最後に今回紹介した鵜飼さんの経歴である「未踏スーパークリエーター」。未踏は情報処理推進機構(通称IPA)が定める若手の逸材を発掘するプロジェクトです。未踏の卒業生には他にもプログラミング教育に積極的に活動している方がいて、その中でも寺本さんの「HackforPlay」は教育ツールとしては秀逸だと思います。ただ、残念な事に教育する側に難解なんじゃないかと思います。その辺りはこちらの記事に書きました。
しかし、やっぱり「未踏」の人達はすごいんですねぇ。彼らのような「本物」が正しい批評や支援をしてくれる事は本当にありがたい事だと思います。