コンピューター教育をアンプラグドな環境でやることが世界では広まっていますよというお話は、別の記事で紹介させて頂いたのですが、具体的な実践例のレポートでわかりやすいものがあったのでご紹介しますね。
コンピューターを使わないコンピューター教育という超まじめな研究
茨城大学附属小学校でのComputer Science Unpluggedについての取り組みが詳細にレポートされており、その効果についての考察も丁寧にご説明されています。なにより現場からの報告というのが説得力があります。この事例では「ルビーの冒険」(リンダ・リウカス著)を使った、アンプラグドな教育の実践例になっています。
詳細な実践例と結果はこちらのドキュメントにまとめられて公開されています。
https://docs.com/shoeisha_books/5947
とりあえずCode.orgとかに飛びついちゃった後に、是非現場先生方にご覧いただきたいですね。黒板と紙と鉛筆をつかっての授業。そして時には体を動かしてコンピューターの中世界を体感する。これは非常に有効な経験方法です。こういうプリミティブな体験は頭の中のコンピューターのイメージをより鮮明にしてくれます。教育方法は一つじゃない。複数の手法の複合で計画すべきです。抽象化の強化に強いコンテンツと論理的思考の強化に強いコンテンツは違います。そしてその両者が未来に必要はプログラミング的思考のエッセンスなんじゃないかなと思います。
良いプログラマーは必ず頭の中に自分のイメージする「コンピュータ」を持っていると思います。そのイメージの中のコンピューターはそれぞれ自分のメモリやCPUと言うコンピューターの中身の部品を持っていてい、自由に情報を出入りさせたり、解かなければならない課題に対して計算や形を変えることができます。それを頭にイメージして、プログラミングでその処理を実現していくんですね。って言っている意味わかりませんよね。表現が難しいのですが、そんな感じなんです。だから自分の頭の中にイメージする自分だけのコンピューターを持つ事はとにかく大切なんですね。すべての人がプログラマーになる為にプログラミング教育をやる訳ではないのですが、新しいモノやサービス作り出す人は、みんな同じような感覚をもっていて、一回自分の頭の中の素材と道具でモノづくりをしてると思います。優秀であればあるほど、その素材と道具の理想をはっきりとイメージしてるので、良いもの作る人は、良い道具を見極める力もスゴイです。その「イメージを持つ能力」を鍛えるのに、アンプラグドなプログラミング教育が非常に有効だとおもいます。
アンプラグドなプログラミング教育と言うのは、先生方が授業をやりやすいというメリットに加えて、上記のような「イメージを持つ能力」の強化について、普通にコンピューターを使った教育より有効な可能性があります。当然プログラミングの教育をすべてコンピューターをつかわずにやるというのはおかしな話になるのですが、適度にアンプラグドなコンテンツを取り入れていくことは非常に効果的で、結局両者は補完関係にあると思っています。
ちなみに、こういう手法ってどうしてもメディアへの露出は減るので、なかなか浸透しないんですよね。こういうのって産業界は宣伝しないんです。だって、パソコンもタブレットもソフトウェアも売れないじゃないですか。金にならないやつは誰も積極的に宣伝しないんですよね。みんな生活かかってますからね。それ期待する方が酷というものです。今回使われている「ルビーの冒険」やIchigoJamでつかわれているカトラリーカードの取り組みは、産業界からアンプラグドを提案している非常に稀な事例なんですね。そうなると、アンプラグドな教育の取り組み発展させていくキープレイヤーは現場の先生方なんじゃないかなと思っています。今はまだ認知度が低いアンプラグドな手法ですが、もう少し広まってくると、「ああ、私だったらこの教え方はこうする」みたいな改良がプログラミングやコンピューターを熟知していない先生達からも生まれる可能性があるというところが、アンプラグドの大きな可能性の一つだと思います。ぜひ現場の知恵に期待したいですね。
茨城大学附属小学校のような取り組みと、小金井市立前原小学校のような取り組みの真ん中あたりに、絶妙な組み合わせの教育が生まれるような期待をしています。コンピューターを使う授業と使わない授業。その両者を効果的に織り交ぜて教育を進められるようになったら、もっと子供達も先生達もハッピーになれる授業になるんじゃないでしょうか。これからも引き続き「アンプラグド」な取り組みをご紹介していきたいと思います。