コンピューターサイエンスアンプラグド(Computer Science Unplugged)と言う研究をご存知でしょうか?ニュージーランドの研究者達が考えだした、コンピューターをつかわずにコンピューターサイエンスを教育する手法です。
http://csunplugged.org/ 本家サイト
http://www.csunplugged.jp/ 日本サイト
この取り組み自身もすばらしいと思いますし、コンピューターの教育はすべてデジタルでなければならないという固定概念を壊して、もっとアナログな部分の実績を大事にしたり、工夫する余地があることを気づかせてくれる大変有意義なコンテンツです。ぜひ広く世間に知っていただきたいと思います。
すでに20カ国以上の翻訳がなされ、世界中で活用されている教育手法(の研究)です。先に紹介したように、日本のサイトも存在し、活動されている先生方がいらっしゃいます。コンピューターの理解に必要な2進法やコンピューター内での色の表現等、様々な事について、紙のカードを使ったり自分たちの体を動かして伝えていく手法です。そこでは一切コンピューターを使いません。アンプラグド(電源を使用しない)な情報教育って意外ですよね。私も最初に知ったときはびっくりしたのですが、でも考えれば考えるほど上手い手法なんです。
コンピューターの教育を受けると、結構長い時間をコンピューターの前で過ごすのが一般的です。これって授業が盛り上がらないんですね。絶対というくらい。教育現場に居る方の方がもっと切実に解るんじゃないですかね。コンピューターの教育って長い孤独な学習をして、そのトンネルの先に「動いた!」っていう喜びを得るのが当たり前の世界。それはそれで楽しいのですが、その「動いた!」という喜びを得る前に挫折してしまうとうのが、コンピューター教育では往々にしてあります。
また、それ以外にも子供達の場合キーボードやマウスの操作がハードルになって、本来教えたい事にたどり着かないという問題や、生徒毎に個別のモニターで進捗するので、個別の理解度の把握が困難になります。そこで進捗を揃えようと思うと、教える側の人数が必要になったりすることが一般的です。
このような初期の段階の挫折や実際に教育する現場での課題を乗り越えるための手法として、アンプラグドな教育手法は大変有効であることがわかっています。普段と同じ授業ができるんですよ。これは先生たちにとってすごく大きい。私もワークショップやるのですが、授業ってライブ感がすごく大切なんですよね。コンピューターを使っていないときのトークによって、受講者側の集中力が違うし、最終的な満足度にも影響します。コンピューターの事業をアンプラグドにすることによって、先生方の普段の力が存分に発揮できるわけなんですね。
プログラミング教育でもアンプラグドな取り組みは積極的に活用されています。コンピューターサイエンスアンプラグドのオリジナル手法にも、プログラミングとは何か?を理解する為のカリキュラムやプログラミングで使う探索のアルゴリズムを教えるためのカリキュラムが存在します。上記日本語のサイトには日本オリジナルのコンテンツを開発されています。また、世界的に有名な絵本で「ルビーの冒険」(Hello Ruby)という本があります。作者はフィンランドの女性プログラマー「リンダ・リウカス」さん。なんとクラウドファンディングで資金を集めて、この本を出版したんですね。これもプログラミング教育のアンプラグドな取り組みとして注目され、実際に授業での活用も広まりつつあります。
こういったアンプラグドな取り組みは有効性が広まりつつも始まったばかりの分野でもあり、工夫できる点がまだまだ沢山残っていると思います。プログラミングが上手くなくても、アンプラグドな教育への工夫は上手くできるかもしれません。いや、普段コンピューターの側に居ない人のほうが、そういった工夫は出てくるのかもしれませんね。
みなさんも「ここはわかり難いな-」というところこそ、アンプラグドな教え方を考えてみてはいかがでしょうか?プログラミング教育の発展に貢献できるアイデアを生み出せるかもしれません。