ロボットプログラミング教材は誰が勝つのか?(後編)

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教育ITエキスポ2017のレポート第2段としてのロボット系プログラミング教材について考える(後編)です。前半に引き続きロボット系プログラミング教材についてレポートしたいと思います。

出展者一覧

今回出展していたロボット系プログラミング教材の顔ぶれ一覧です。

  • Z会(LEGO)
  • ヒューマンアカデミー
  • アーテック
  • MakeBlock
  • タミヤ&ナチュラルスタイル
  • ナチュラルスタイル&ワイズインテグレーション
  • ITOS

後編ではMakeBlockからナチュラルスタイル(IchigoJam系)とITOSを紹介したいと思います。

MakeBlock

http://www.makeblock.com/
中国深センのメーカーが開発するSTEM教育用ロボットです。私の初見は2年ほど前?のIT系の総合展示会だったと思います。当時プログラミング教育用というより、IoT関係のプロトタイプ開発機材を物色している最中にこの商品の説明を受けました。LEGO社製品の後追いと言ってしまえばそれまでですが、汎用ボードコンピューター(Arduino)ベースであるため、LEGO社製品と比較して高学年向け(又は大人向け)の製品として魅力的だと思いました。
当時既にアジア地域を中心に実績を上げていたこともあり、もう少し早く日本でも広まるのかと思っていましたが、意外と日本マーケット攻略に苦労しているようです。さすがに2年も経つと販売経路は確保したようですが、それを広めるコミュニティー確保に失敗しいるようにみえます。結局STEM教育のツールとして優秀な事はすぐにわかるのですが、どのように教えるときに使うかというノウハウの蓄積が日本語でなされてはいないため、手を出しづらいというのがネックなのではと思います。そうなってくるとカテゴリー的に近いアーテックさんのロボット製品の方が遥かに情報やサポートが手厚く、また着実に日本の「学校」という閉鎖されたマーケットでの実績を重ねているため、太刀打ちができないのかなと思います。たぶん日本のマーケットを理解したマーケターの確保ができていなかったんじゃないかなと思います。このあたりは日本は良くも悪くも未だにガラパゴスです。
このようにマーケティングや商業的には後手にまわっている製品だと思われますが、じゃ製品が魅力的ではないかというと全然そんなことは無く、むしろかなり魅力的な製品です。冒頭でお話したとおり、これは中学校以上の高等教育向けのSTEM教育用製品としてはかなり優秀な製品だと思います。ただ、これを使ってプログラミング教育ができる大人が日本の学校にどれだけ居るのかと言われると絶望的な気がします。また、最近mBotというビジュアルプログラミングツールをリリースし、かなりプログラミング環境についても初等教育を意識した開発が行われています。こういった取り組みがもっと進めば、もともと持っている高いレベルの教育を賄えるポテンシャルとあいまって大化けする可能性があるのかもしれません。
日本で始める場合には定期的に「世田谷ものづくり学校」で体験教室があるので、そちらに参加されるのが良いと思います。というか、そこしか無いのが問題・・・良い製品なのに残念ですが、このままだと残念なまま終わってしまう気がします。日本のマーケットナメたイカン。だって、日本人の私達だって戸惑うこと沢山あるんだから・・・

ナチュラルスタイル&ワイズインテグレーション
ナチュラルスタイル&タミヤ

今回の展示会で一番HOTだったブースが、ナチュラルスタイルさん+αのロボット教育ブースだったと思います。ナチュラルスタイルさんはIchigoJamによるプログラミング教育の普及を展開されていて、その中のロボット型教材がワイズインテグレーションさんと開発したソビーゴ及び、タミヤさんと開発したカムロボットの様です。

ソビーゴ

http://hello-sovigo.com/
ソビーゴロボットの特徴はボディがダンボールだということ。カラーリングを始めとしたカスタマイズをハサミやノリで自由にできます。ロボットの作成を身近な素材や道具を使った工作と融合させるという発想は、子供向けの教育ツールとしては正しいと思います。教育カリキュラムとしても実績を積み重ねているようで、中学校のカリキュラムに利用されるなど、徐々に広まっているのかなと思います。
ソビーゴの販売形式は工夫がされていて、買い取り方式とレンタルが存在します。また、常設の学習施設向けのライセンスとは別に、ワンタイムのイベント向けの価格も準備されていて、ちょっとしたワークショップ向けの機材調達としては非常に助かるサービスだと思います。特に最近多い企業のCSR活動などでワークショップを開く場合には、年間で何度も繰り返しできる企業は限られているので、ワンタイムのレンタルがあることはとても助かると思います。

タミヤ カムロボット

http://tamiya-robotschool.com/trial/
とうとうタミヤさんが出てきたか-という感じです。ラジコン、ミニ四駆、プラモデル・・・機械玩具の雄がとうとうロボットプログラミングの分野に名乗りをあげたという事は、業界的にはかなり大きなインパクトではないかと思います。トライアルのロボット教室が始まってます。
ロボットプログラミング教育が普通のプログラミング教育と違うのは、まさに「ロボット工作」の部分です。ロボットの動力というのは、基本的にはモーターによる回転運動とサーボと呼ばれる機械の横方向の運動の組み合わせです。その組み合わせを上手く設計して、商品化につなげるノウハウが豊富なタミヤさんがこの分野に乗り出してくるのは時間問題だと思っていましたが、プログラミング部分としてIchigoJamを選んできたのはかなり面白いと思いました。昨年ぐらいからIchigoJamを使ったワークショップをタミヤ本社で実施されていたので、気配はあったのですが、商品化に踏み切ったと言う意味は大きいと思います。
IchigoJamを使ったプログラミングのでは「BASIC」というテキスト言語で行うため、Scratchの様なビジュアルプログラミングより子供にとってハードルが高いとされ、敬遠される風潮があります。タミヤさんだってそのあたりで商品化に向けての検討を、これまで子供向け製品のビジネスで培った経験を元になされたはずです。そのタミヤさんが「BASIC」で子供向けの教育が出来ると判断されたと言うことの意義は大きいと思いますね。興味を引くコンテンツで教え方さえ間違わなければ、子供達はかなり早い段階からテキスト言語を習得します。だって子供達がやってるカードゲーム(デュアルマスターズ)とかのルールとか覚える方がもっと難しいですよ。カードごとの効果のパターンとかすっごい複雑ですから。仕事帰りの疲れた頭でやるのは本当にしんどい・・・
また、今回のカムロボの発表と並行して、タミヤさんとナチュラルスタイルさんは共同でプログラミング教室を展開することを発表されています。コースは大きく2つあって、一つはロボットコースでもう一つは純粋なプログラミングコースの様です。まだ良くわかりませんが、ソビーゴさんが学校教育や民間の教室への機材やライセンス販売を行う方向で、タミヤさんは直接的なプログラミング教室を展開してスタートするという区分けのようです。いずれにせよIchigoJam陣営が体制を整えた事で、ロボット教育の分野は新たな競争に突入したなという印象を受けました。

ITOS

ITOSさんは2015年設立とかなり新しい会社さんで、正直私は今回の展示会で初めて知った会社です。
http://www.itos-kk.jp/products/move.html

主な事業分野はSDカード等のメモリ製品のパソコン周りのアクセサリ製品の製造・販売のようですが、設立当初より学校教育向けの3Dプリンタ及びCADソフトウェアを手がけるなどしていたようです。今回のロボットもその延長なのでしょう。ロボットもよくできていると思いますが、特徴的なのはそのプログラミング環境です。よくあるScratchベースではあるのですが、作ったプログラムをソフトウェア上でシュミレーションしながら作っていくことができます。いわゆるこの業界で言うエミュレーターっていうものなのですね。エミュレーターがあると確かにすぐに作ったプログラムのテストができるので、プログラム作成の効率は格段にあがると思います。プログラム作成の効率が上がると、カリキュラムの実行効率も上る可能性があるわけで、非常に面白い試みだと思います。もちろん、実際にロボットをつかって試行錯誤を繰り返す事自体が学習であって、シュミレーションに頼ってしまったらロボットプログラミング教育ではなく、ただのパズル型プログラミング教育アプリになってしまうので、その存在意義はもう少し考える必要があるのですが、とにかく単純なScratchをゴールとしなかったところは評価されるべきだと思います。なんども似たような事を言いますが、こういうチャレンジを行うことで教育のイノベーションが生まれます。Scratchで満足してしまったら、10年近く前のイノベーションで満足しているのと同じ事です。始まったばかりの分野なので、もっとこういうチャレンジが生まれると良いなと思います。

まとめ

プログラミング教育の中でもロボットプログラミングは非常に効果的な分野だと思います。それは教育コンテンツを作る側も色々な工夫の余地が残されていて、子供達の複合的な能力を刺激する分野であり、子供達にとっても色々な事を楽しみながら学べるコンテンツにすることができるからです。また、ロボットというのは動力(モーターやサーボ)と各種センサーの複合体であり、これら未来の社会を形作るIoTの基礎となる技術を若い世代が広く経験することは、産業界にとっても大いに期待する教育となります。惜しむらくはこのような分野が2020年から始まるプログラミング教育義務化に向けた学習指導要領に明記されなかったことですが、今回紹介したような民間のチャレンジャー達がこの分野を切り開いて行くことが、日本全体の未来の力になると思います。ぜひ頑張って頂きたいですね。

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コメント (1)
  1. SB より:

    大変勉強になりました。
    教育事業に従事しており、プログラミング教育について関心を持つものです。
    今後もいろいろとご教示頂けると嬉しいです。

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